テレビドラマに関するTwitterの分析を去年から続けている。この夏ドラマについては7月に”その1”として書いたのだが、それっきりになっていた。TBSメディア総研が運営するメディア論壇“あやとりブログ”の方では「半沢直樹」に関する記事をいくつか書いてたので、気になる人はこのリンクから読んでくださいな。
おっと、話がそれた。あやとりブログで寄り道しつつ、夏ドラマ分析の続きを書いていこう。ただもう、『半沢直樹』一色なので、この作品に絞ってしまう。
細かく見たい人は画像をクリックすれば大きく見える。
まず青い線は、“半沢直樹“という言葉が入ったツイートの数を日ごとに計算したもの。第1話から第8話までをグラフにしている。初回放送日ですでに6万オーバー。さらに第5話から水準が上がっている。あまり減ることはなく、増加基調できている。
緑の点は、視聴率。すでに話題になっている通り、一度も下がることなく第8話まで来ている。最終回で40%に達した『家政婦のミタ』も、その前までは20%台で推移したので、それを上回るペースだと言える。
それから、「倍返し」が入っているつぶやきを抽出したのが赤い線。これが面白い動きを示した。最初は半沢ツイートと比べると小さな山だったのだが、9月8日の第8話では、半沢ツイートの半分を超えている。つまりこれは、番組視聴を離れて使われはじめているということだろう。“流行語“のひとつになったことの証しだ。
このグラフからは、とにかくこのドラマがどんどん盛り上がっていっているのがわかる。勢いが落ちたりなどはせず、押して押して押しまくっている感じ。ドラマの内容そのままだ。
それからよく見ると面白いのが、第5話で大きく盛り上り、一週おいて第6話でさらに大きく盛り上がっている。第5話で大阪編の片が付き、世界陸上で一回休止して第6話は東京編になって新たな展開でさらに盛り上がった。
世界陸上で一回休止したことを揶揄する声もあったが、結果的には計算された編成のように、視聴者が盛り上がるような流れが出来た。もちろん計算ではないだろうが。この、前半と後半で物語がくっきり分れる構成は、今後参考になるのではないか。
青い線は上のグラフと同じ、半沢ツイートだ。赤い点は少々長い説明が必要。半沢ツイートはその日一日中のツイートの合計だが、その中から放送時間中のものだけを抽出。さらにそのうちから“高揚興奮“を示すつぶやきを選んでカウントした数が赤い点だ。
“高揚興奮”とは、強く気持ちを動かされた時につぶやく言葉で、すごい、面白い、泣ける、笑う、怖い、などなどなどだ。半沢直樹の場合、「面白い」というつぶやきが中心になる。
つまり赤い点はドラマを観て強く気持ちを揺さぶられた数だと言えるだろう。当然、青い線の数値よりずっと少ないので右側の目盛で見てほしい。800程度から2000越え程度の水準だ。
注目したいのは第1話だ。赤い点、興奮ツイートがここだけ突出して高い。このドラマを見ている人なら、初めて観ると「面白い!」と感じるのを知っているだろう。第1話では、何気なく観はじめたらこれまでのドラマにない面白さで“興奮“したということだ。
また、第1話は2時間スペシャルだった。その分、興奮ツイートも多かったのだと言える。ただ、青い線の、ツイート数全体はそんなに多くはない。つまりそれだけ、ツイートの中で興奮したものが多かったということだ。
これも今後の参考になるデータだと思う。面白いドラマが初回2時間だと、それだけネット上での興奮度が高まり「半沢面白いぞ!」という情報が拡散していくのだ。キャストではなく企画に強さがある時に、初回2時間は大きな効力を発揮するのだと言える。
ここまで「半沢直樹」の話をしてきたが、別のドラマにも触れておこう。「ショムニ2013」だ。これもツイート数の推移をグラフにしてみたので見てもらう。
これはこれで驚きの結果だ。初回放送日には14万件に迫るほどのツイート数だったのが、第2回以降極端にしぼんで二度と浮上しないままだ。視聴率もいまや一桁台に落ち込んでいるのでこのグラフの通り。それにしても、ここまでガクンと下がると目も当てられない。
ツイート数は視聴率を先取りするのかもしれない。半沢直樹でも、ツイート数がぐっと増えるとそのあとで視聴率も上がる。ショムニでは、ツイート数が下がった後で視聴率も下がっていった。この2つはかなり極端な例だろうからそのまますべてに当てはまりはしないだろうが。
ツイートが視聴率の予兆であるのは別のことからも言える。前回の記事「2013夏ドラマTwitter分析(1)」でこんな表をお見せした。
これは「ショムニ」「Woman」「半沢直樹」「summer nude」の4つのドラマの第1話に対するツイートを”感情分析”したものだ。放送時間中のツイートを抽出して、“好意好感“、”高揚興奮”、“否定“の3種類の気持ちを表すツイートを選び出してカウントしたものだ。
見てわかるように、「半沢直樹」は“興奮“ツイートが多い。一方「Woman」は“否定”が多い。シングルマザーの辛い生活を描いたドラマで、「見るのが辛い」「見るのがいやだ」などとつぶやきが多いということだ。見るのが辛い、と言いながら見続けているわけで、それだけ深く見入っているのだろう。
「ショムニ」「summer nude」は強いて言えば“好意好感”が多いが、あまり特徴がない。それから合計値で10%程度差がある。
この時から2か月経って、感情が強く動かされる「半沢直樹」と「Woman」は視聴率的に成功。「ショムニ」ほどではないが「summer nude」も視聴率は伸びていない。
つまり、感情を強く動かされるドラマの方が、その後視聴率が上がっていく、と言える、のかもしれない。
「かもしれない」と、奥歯に物が挟まったような言い方をするのは、断言できるほどサンプルがまだないからだ。もっと言うと、ツイッターから何かが言えるようになってきたのはここ最近の話だ。普及が一定レベルを超えたからだろう。
テレビとツイッターには強い相関性があるのはまちがいない。ただ、だから何が言えるのかは、まだまだなんとも言えない。引き続きいろいろ試していこうと考えている。
コミュニケーションディレクター/コピーライター/メディア戦略家
境 治
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