プラットフォーマーは他人に任せろ!〜iPadから見えるコンテンツの未来・その19〜

DTPboosterに行ってiPadでのパブリッシングについていろんなことがわかってきた。わかってくるほど、実際どうするよ、という問題が出てくるなあ。

日本語の書籍とePub形式にはまだまだ課題が多い。DTPboosterでは、Adobe InDesignからePub形式のファイルをつくる手法が説明された。もともとInDesignはePubでの書き出しができるのだそうだ。ただ、そのままだと思い通りの表示にならないので、ePub用のエディターで整える必要があるという。Sigilというフリーウェアがあり、いわゆるWYSWYGで操作できる。

その際に、多少WEB的な知識が必要。ここに、DTPデザイナーとWEBデザイナーのこれまでの知識の融合が出てくるわけだ。面白いけど、大変でもある。

そうやってePub形式でデータを作っても、いま現在はAppleの公式書籍アプリiBooksで売ることはできない。これがいつ日本でも販売できるようになるのか、全然わからない状況。iTunesでの音楽販売のように何年もかかるのだろうか?

一方、日本ではドットブック形式やXDMF形式の電子書籍を販売する動きが出てきた。日本電子書籍協会はiPhone上で読める本を売るパブリのサービスを開始。さらにはモリサワがMy本棚というiPhoneアプリを出して、そこでも本を売りはじめた。ダイヤモンド社も独自に開発した書籍リーダーを出しているし、『電子書籍の衝撃』のディスカバー21社はもともとiPhoneでのリーダーアプリを出していた。

ぼくはそれぞれで試しに1〜2冊ずつを買ってみたのだけど、こういう状態だとけっこう悩ましい事態になる。自分がどのリーダーアプリでどの本を買ったのか、さっぱりわからなくなるのだ。

電書協のパブリも、モリサワのMy本棚も、ディスカバー21のD21 Viewerも、iPhone上ではリーダーアプリのアイコンが表示されている。だから、それぞれのどこにどの本があるかわからない。一方でダイヤモンド社のものはそれぞれの本が単独のアプリとして表示される。だからわかりやすいけど、たっくさんあるぼくのiPhoneのアイコンの中から探すのは大変だ。

リーダーアプリが乱立し、それぞれが囲い込もうとすると、こうなってしまう。自分たちだけの売場を確保して読者を囲い込み、ついでにApple3割を回避しようということなのだろう。でも売る側の都合を押し出せば押し出すほど、買う側にとって不便になりかねないのだ。(パブリの場合だと、購入する際にはSafariが起動してECサイトで決済する。これがすごくややこしい)

でも何しろいま現在は、iBooksで売ることができないのだから、しかたないとも言える。

そんな中、ディスカバー21社はマルチプラットフォーム戦略に出るらしい。ある記事で「いちいちあちこちに合わせて作っているとお金がかかるので、一発でぴゅっといろいろなプラットフォームに流せるようなシステムをいま開発してもらっているところ。」と干場社長が語っている。さらに「アパレルメーカーと同じように考えている。直営店でも売るし、デパートにも出店する。顧客はどこで買ってもいい。」(これは日経の記事なのだけど、個別の記事へのリンクは原則禁止だと言うので引用だけしている。結果、記事を読んでもらうチャンスを逸してると思うのだけどなあ)

たぶん、これが正しいのだと思う。

出版社はプラットフォーマーになる必要はないのだ。

これ、かなり重要なポイント。みんな頭に入れておいた方がいい。

プラットフォームを握られるのはいやだ、困る、死んじゃう。そうとらえると、Appleは黒船に見える。スティーブ・ジョブズが「カイコクシテクダサ〜イ(宮崎吐夢調で読もう)」と迫るペリーに思えてくる。

そうじゃなくて、プラットフォームはジョブズに任せるし、誰がどう作ってもいい、自分たちはお客様が欲しいと思うコンテンツをつくるだけだ。そうとらえれば、Appleはノアの箱船だ。しかも、iPad内で他にもプラットフォームができるのなら、あるいは他社が別のタブレットPCを出すのなら、それもこれも全部ノアの箱船になりうる。だったら全部に乗っちゃえばいいわけだ。

ただしこれは、”電子書籍”の話だ。ePubかXDMFだか、とにかくほぼテキスト中心で、挿し絵や図がはさまる程度の”いわゆる本”の電子版。雑誌なんかはまたちがってくる。

という話はまたつづきでね・・・

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コメント

  1. スティーブ・ジョブズ 危機を突破する力

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  2. ものの本によると、Steve Jobsは、デスクトップが、ぐちゃぐちゃなのが大嫌いだそうです。だから、アプリやアプリのデータでわけわかんなくなたものを、検索させるしくみと作ったし、iOS4では、フォルダーとか本棚を用意した。出版社は、本屋の自分たちの売り場のごとく、日経ビジネスコーナーとか、角川文庫コーナーみたく、作りたがるけど、iPhone, iPad上では、そんなもの関係なく、ぶちこわして、整理するエージェントが与えられるはず。出版社の人は、ちょっと前のレコード会社の人たちと同じで、ユーザが作者(クリエータ)を追いかけていて、パブリッシャーを追いかけているわけじゃないことを知らない。ドリカムが、ソニーから東芝(古)に遺跡しても、ドリカムで追いかけるのであって、ソニーコーナーに行きたいわけではない。同様に、村上春樹は、探すけれど、角川文庫で探しはしない。と、コメント打っている間に、またいろいろと思いついたので、それは、自分のblogに展開することとします。

  3. ユーザーは今後、日々増えるアプリ、コンテンツをどう整理するのか、そしてその中で自分たちのコンテンツをどう整理してもらうようもっていけばいいのか、ですね。というわけで、また思いついたのね・・・

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